甘いノイズ
「ねえ、本当にここでいいの?」
私はお気に入りのスニーカーを脱ぎながら、彼の顔を覗き込んだ。
25歳になって、こんなに狭い空間に男の子と二人きりで入るなんて思ってもみなかった。
ここは、彼が内緒で借りているという、畳の古びた部屋。
開け放した窓から流れ込む夜風は生ぬるく、私たちの距離をじりじりと縮めていく。
彼がコンビニの袋から缶ビールを取り出すたび、カサリと硬い音がして、私の心臓を小さく跳ねさせた。
じっと私を見つめる彼の視線が、言葉以上に多くのことを語っているようで、私は慌てて冷えた缶に指を伸ばした。
熱を帯びる井草
沈黙が長くなるほど、部屋の中の空気が重く、そして熱くなっていくのが分かった。
彼はビールを持ったまま動かず、ただ私の横顔をじっと見つめている。
見つめ合う時間の長さに耐えかねて、私は床に視線を落とした。
私たちの間にある、畳の古びた部屋の床は、あちこちの網目が細かく毛羽立ち、少しだけささくれている。
それは、今の平穏な生活に退屈していた私の、心の奥のひび割れと完全にシンクロしていた。
「日向、こっち向いてよ」
彼が低く呟き、私の肩にそっと手を置いた。
衣服の擦れる衣擦れの音が狭い四畳半に響き、彼の指先から伝わる高い体温が、私の肌の裏側をじわじわと侵食していった。四畳半の融解
もう、自分の立場も、明日戻るべき場所のことも、頭の中から完全に消え去っていた。
彼の吐息が私の頬を掠めるたび、全身の細胞が甘く痺れていくのを感じる。
古びた畳の匂いが、室内の濃厚な熱気と混ざり合い、ひどく官能的な香りに変わっていく。
彼の手がゆっくりと私の顎を持ち上げ、視線が完全に絡み合った。
「だめ」と言いたい唇は、彼の熱い気配に塞がれそうになり、ただ浅い呼吸を繰り返すことしかできない。
この狭い四畳半の世界で、私はただ、彼という逃れられない引力にすべてを委ね、この先の展開を想像して激しく胸を焦がしていた。


