揺れる琥珀色の影
終電が行ってしまった後の私の部屋は、昼間の騒がしさが嘘のように静まり返っていた。ローテーブルの上に置かれた二つのグラスには、溶けかけた氷がかすかな音を立てて浮かんでいる。会社の同期である彼は、ソファの端に少し窮屈そうに腰掛け、テレビの画面をぼんやりと眺めていた。同じ空間にいるのに、お互いの間にはクッション一つ分のじれったい距離がある。彼が体勢を変えるたびに、ナイロン製のシャツが擦れる柔らかな音が静かな室内に響いた。缶ビールのぬるくなった匂いと、彼のつけている少しウッディな香水の香りが混ざり合って、部屋の空気をいつもより少しだけ濃くしている気がする。私は膝を抱えたまま、次に何を話せばいいのか分からず、ただグラスの水滴を指先でなぞっていた。
「まじで引き留めて悪かった。明日早いのにさ」
彼が少し申し訳なさそうに笑いながら、私の方を振り返る。その飾らないラフな言葉遣いに、少しだけ緊張が解けるのを感じつつも、胸の奥が妙にざわついた。
「別にいいよ。一人で飲むよりは楽しかったし」
強がりのような言葉を返しながら、私は彼の手元に視線を落とした。男らしい大きな手がグラスを握る様子を見ているだけで、なぜか喉の奥が少しだけ乾いていくような感覚があった。
近づく鼓動の音
夜が更けるにつれて、部屋の温度がじわじわと上がっていくような錯覚に囚われる。エアコンの風は冷たいはずなのに、首筋にじわりと熱い汗が浮かぶのが分かった。彼はいつの間にかソファから床に降りて、私のすぐ隣に背中を預けていた。触れ合いそうなほど近い距離。彼が呼吸をするたびに、その温かい吐息が私の剥き出しの脚にかすかに触れて、思わず指先に力が入る。お互いにテレビの画面を見つめているフリをしながらも、意識のすべてが隣の存在に集中していた。言葉が途切れ、長い沈黙が二人を包み込む。見つめ合うわけではないのに、お互いの出方を探り合うような、目に見えない空気の揺らぎが部屋の中に満ちていた。彼がふと、こちらに顔を向けた。その真っ直ぐな視線と私の目が重なった瞬間、心臓が跳ねるような強い衝撃が走った。
「なあ、本当は眠くないんだろ?」
冗談めかした彼の声は、いつもより少しだけ低くて、耳の奥に心地よく残った。
未完成のままで
世界がこの狭いワンルームの部屋だけに縮んでしまったかのように、周囲の雑音が完全に消え去っていた。彼の肩が私の腕に触れた瞬間、そこから強烈な熱が体内に流れ込んでくる。内側から湧き上がる衝動を抑えることができず、息を吸うたびに彼の匂いが肺をいっぱいに満たしていった。次にどちらが動けば、この友達以上の、同期という境界線が崩れてしまうのか、頭では分かっているのに視線を逸らすことができない。彼の長い指先が、躊躇うように私の手首にそっと触れた。その肌の熱さに、全身の血巡りが一気に加速していくのが分かった。お互いの存在に強烈に惹きつけられ、これまでの関係性をすべて壊してしまいそうな、圧倒的な予感に胸が締め付けられる。私たちはどちらも動けないまま、ただ熱い吐息を重ね合わせるようにして、次の瞬間を激しく求め始めていた。


