ほどけない窮屈なままで
「ねえ、ちょっと待ってよ。急ぎすぎだってば」
私は少し引きつった冗談っぽさで笑いながら、ホテルのベッドの端にしがみついた。
今日のために気合を入れて穿いてきた、ストレッチの効かないインディゴブルーのタイトジーンズ。
それが今の私と彼の間の、じれったい防波堤みたいになっている。
彼は私の言葉を半分も聞いていないような顔で、低く笑った。
「待てない。シャワーとかいいから」
彼の指先がジーンズの硬いボタンに触れ、金属同士が擦れる小さな音が静かな部屋に響く。
いつも通りの強気な私でいたいのに、彼の指がデニムの生地越しに太ももを撫で上げるたび、肌の裏側がピリピリとしびれた。
密室の熱とスライド
ジッパーが下りる鈍い音が、妙に生々しく鼓動を急かせる。
彼は手際よく、でも私の肌を確かめるようにゆっくりと、窮屈なデニムを足首へと引き抜いていった。
シャワーを浴びていない夏の終わりの肌が、ホテルの冷えた空気に晒されて一瞬だけ粟立つ。
けれど、すぐに彼の両手が私の剥き出しになった太ももへと滑り込んできて、その冷えは一瞬で吹き飛んだ。
「……なんか、恥ずかしいんだけど」
「俺はこっちの方がいい」
視線が絡み合い、どちらも逸らせないまま、部屋の空気が密度を増していく。
お互いの汗の匂いと、さっきまで外にいた街の残暑の気配が混ざり合い、呼吸がどんどん熱くなっていくのが分かった。宙に浮く境界線
彼は私の腰を引き寄せると、そのまま私のヒップを両手で包み込み、ぐっと上方へと持ち上げた。
視界がふわりと揺れ、私の身体はシーツから完全に浮き上がる。
ホテルの大きな鏡に、乱れた髪と、彼の広い背中にすがりつく私の指先が映っているような気がして、私は思わず目を閉じた。
支えられているお尻から伝わる彼の体温は、私の心臓を破裂させそうなほど熱い。
「ねえ、ダメ、落ちる――」
「落ちないよ。俺が持ってるから」
耳元で囁かれた低音の吐息が、首筋を真っ直ぐに焦がしていく。
お互いの存在に強烈に引きずり込まれ、もう日常の私には戻れないという確信が胸を支配する。
彼にすべてを預けたまま、私はさらに深く、その熱の中へと沈んでいった。


