深夜のナースステーションの片隅で、微かに唸るパソコンの排熱だけが響いている。
白衣の裏側の秘密
「まだ、帰らないんですか?」
カルテを整理していた私の背後から、当直医である彼の低い声がした。普段は無口で、仕事以外のことでは滅多に口を開かない人だ。私が振り返ると、彼は少し疲れた様子で白衣のポケットに手を突っ込み、じっとこちらを見つめていた。
夜勤の制服の下、いつもとは違う少し大胆なカッティングのアンダーウェアを着けていることを、もちろん彼は知らないはずだった。けれど、彼のまっすぐな視線が私の腰のあたりに注がれるたび、まるで布地を透かして見られているような、奇妙な気恥ずかしさと緊張感が背中を駆け抜ける。
「もう少しで終わりますから」
私はわざと平然を装い、書類をトントンと机に打ち付けた。衣服が擦れるわずかな音が、誰もいない静かな空間にやけに生々しく響く。
重なる影と熱量
彼はゆっくりと歩み寄り、私のすぐ隣のデスクに腰を掛けた。途端に、彼がいつもまとっているほのかな消毒液の匂いと、男の人特有の強い肌の熱が押し寄せてくる。
「手伝おうか」
そう言って伸ばされた彼の手が、私の手元にあるファイルに触れた。その拍子に、彼の指先が私の手の甲をかすめる。驚くほど熱い。その一瞬の接触だけで、張り詰めていた部屋の空気が一気に爆発しそうなほどの熱を帯びる。
私たちは見つめ合ったまま、言葉を失った。彼の瞳の奥にある、いつもとは違う熱い光が、私の胸の奥を激しく揺さぶる。逃げ場のないこの狭い空間の中で、お互いの吐息がすぐ近くで重なり合っていた。
夜を徹する引力
ナースステーションの蛍光灯が、二人の影を壁に引き延ばしている。この閉ざされた部屋の中で、私たちはもう、ただの同僚という境界線を維持できなくなっていた。
彼が静かに立ち上がり、私の背後に一歩踏み込んでくる。触れるか触れないかの距離から、彼の確かな体温と、抑えきれない強い衝動がダイレクトに伝わってきた。私の呼吸は完全に乱れ、小さな吐息が唇から漏れる。
「……気づいてたよ」
彼の低い囁きが耳元を掠め、ゾクリとした戦慄が全身を走る。彼の手が私の腰へと回り、引き寄せられるように体が重なるその瞬間、私たちの理性を繋ぎ止めていた最後の糸が、音を立てて千切れようとしていた。


