始まりのノイズ
「ねえ、ちょっと待ってってば……!」
私はお気に入りのミュールでアスファルトを鳴らし、彼の広い背中を追いかけた。
週末の夜、渋谷の喧騒。友達との待ち合わせに遅れそうで焦っていた私に、彼は信じられないほどの強引さと、それ以上に抗えない笑みで声をかけてきた。
「時間ないんでしょ? なら、一番手っ取り早く楽しいことしよ」
彼の低い声が耳元をかすめた瞬間、頭の芯がじんわりと痺れるような感覚に襲われた。普段なら絶対に無視するはずの誘い。なのに、彼の手首を掴む指の強さと、微かに漂うシトラスの香りが、私の理性を一瞬でフリーズさせる。
流されるままに連れてこられたのは、大通りから一本入った路地裏に佇む、洗練されたスタイリッシュなホテルだった。
エントランスをくぐり、外界のノイズが遮断された瞬間、私の胸の鼓動は自分でも驚くほど激しく波打ち始めていた。
急速な融解
エレベーターが目的の階に到着し、部屋の重い扉が閉まった瞬間、そこにはもう逃げ場なんてなかった。
「あ……」
言葉を紡ぐ暇さえ与えられない。彼はドアに私を優しく、だけど拒絶を許さない強さで押し付けると、じっと私を見つめた。
衣服が微かに擦れ合う音が、静まり返った部屋にやけに生々しく響く。
「っ、ん……はぁ……」
彼の圧倒的な体温が、薄いトップスの布地を透過してダイレクトに肌に伝わってくる。じわりと身体の奥底から込み上げる熱。
至近距離で絡み合う視線の強さに、私は自分がただの「流されやすい女子大生」に成り下がっていくのを感じていた。
彼は私の戸惑いなんて最初から想定内だと言わんばかりに、強引に、だけど的確に私の心の隙間を埋め、一気に二人の距離をゼロへと縮めていく。その性急で容赦のないアプローチに、私の内側の防壁は一瞬で決壊した。加速する衝動
大きなベッドに倒れ込むと、柔らかな沈み込みと共に、彼が放つ圧倒的な存在感に包み込まれた。
それは何の予兆もない、唐突で抗いがたい衝動だった。
「は、あッ……ねえ、待って……っ」
彼の瞳には一切の躊躇いがなく、熱烈な気配が私の全身を支配していく。
その圧倒的な熱量と、絶え間なく押し寄せる肌の感触に、私は声を維持することさえできなくなる。
シーツを握りしめる指先が震え、視界が強烈な感情の波で白く染まっていく。一度始まったその引力は、私を置き去りにしたまま加速し続け、何度も何度も、抗う間もなく私を未知の感覚の向こう側へと連れ去っていく。
見上げる彼の表情はどこまでも熱く、私を完全に捉えて離さない。
頭の芯までとろけそうな熱情の渦の中で、私はただ、この危険なほど魅力的な瞬間に身を委ね、終わりのない夜の淵へと沈んでいくしかなかった。


