無垢な視線と、糊のきいた白
「あの……本当に、そんな格好で僕の部屋に?」
薄暗いリビングのソファの端で、彼は膝の上に固く拳を握りしめ、上気した顔を床に向けていた。
まだ誰の肌にも深く触れたことのない、ひたむきで無垢な気配。
その後輩の初心な狼狽を受け止めながら、私は自分の胸の高鳴りを、プロとしての冷静さの裏に隠そうとしていた。
彼の願いに応じて私が身に纏ったのは、勤務を終えたばかりの、わずかに消毒液の匂いを残す白いナース服だった。「あなたがどうしても見たいって言うから。……変かしら」
私は努めて優しく微笑み、彼の隣へと静かに腰を下ろした。
カサリ、と糊のきいた清潔な生地が擦れ合い、静まり返った室内にかすかな摩擦音を立てる。
その硬質な音は、彼の張り詰めた緊張の糸をさらに引き絞るようだった。
おそるおそる上げられた彼の視線が、私の襟元から、ストッキングに包まれた膝へと彷徨い、やがて私の瞳の奥でぴたりと止まる。
言葉を失った二人の間に、じれったいほど濃密な沈黙が、重たく引き延ばされていった。
浸透する体温と、乱れる呼吸
「顔が赤いけれど。熱でもあるの?」
私がわずかに身を乗り出すと、彼の放つ青い石鹸の香りと、迷いを含んだ浅く熱い吐息が私の頬をかすめた。
彼の手が震えながら伸びてきて、私のナース服の袖口に、触れるか触れないかの距離で躊躇うように止まる。その瞬間、張り詰めた空気を通じて、彼の掌から発せられる純粋な熱量が、私の肌の奥へとじわじわと伝染していくのが分かった。
白く清潔なナース服の生地は、彼の視線を集めるごとにその頑なな輪郭を失い、私の内側からせり上がる体温によって柔らかく融け始めていくようだった。
彼が意を決したように、私の手首をそっと包み込む。
衣服という境界を隔てていても、互いの血管を巡る血の熱さが混ざり合い、感覚が境界線を失っていく。未遂の引力、崩壊する境界
「……僕は、あなたを前にして、もう正しいままでいられそうにありません」
彼の低く掠れた声は、私の胸の奥を激しく揺さぶった。
彼の手が手首から腕へ、そして私の肩へとゆっくりと滑り込んでくる。
その手つきは不器用でありながら、私をどこへも逃がさないという強烈な引力に満ちていた。このナース服のボタンを彼の手が一つでも外してしまえば、私たちはもう「先輩と後輩」という安全な記号には戻れない。
清潔で冷徹であるはずの白い布地は、今や二人の狂おしい情熱に炙られ、完全にその役割を失おうとしていた。
彼の濡れた瞳が私の唇を捉え、息が完全に重なり合う。
お互いの存在に強烈に惹きつけられ、すべてが変わってしまうその一瞬の深淵で、私たちは張り詰めた時間の糸に繋ぎ止められたまま、深く、深く見つめ合っていた。


